【相模原】相模原産の鹿肉で犬猫用ジャーキー製造/専用の生産設備導入しことし製品化


ジビエ肉の新たな活用方法に「ペットフード」を―。主にシカやイノシシの肉を使ったコロッケや肉まんなどを販売する「山賊ベイビーズ」は、犬猫用の鹿肉ジャーキー(干し肉)の自社生産に乗り出した。経営する竹内陶子さん、僚さん夫妻が相模湖地域で駆除する鹿をできるだけ資源として活用したい考え。宮ケ瀬湖湖畔の鳥居原ふれあいの館(相模原市緑区鳥屋)と、同地に出店する自社のキッチンカーなどで販売する。【2024年10月1日号掲載】

相模湖産の鹿肉で作る3種類(肉、肺、肝臓)のジャーキー

相模湖産の鹿肉で作る3種類(肉、肺、肝臓)のジャーキー



「野生動物との共生の会」会長として啓発活動に取り組む陶子さんは、「奪った命を捨てることなく活用することが大切」と話す。

結婚を機に相模湖地域に住んだが、自家菜園が野生動物の食害に遭うようになったのを機に、僚さんとともに狩猟免許を取得した。夫妻が1シーズンに捕獲するシカは約10頭。皮は陶子さんがなめして靴や財布などの小物作りに利用するが、処理施設がない相模原市では食用として出荷できない首やほほの肉、内臓の活用方法が悩みだった。

塩分や着色料、保存料などは一切無添加で、鹿肉本来の低カロリーかつ高たんぱくで鉄分が豊富なことも特徴で、「シカジャーキー」と名付けた。「大型犬でも食べ応えのある厚み」にスライス。肉(さまざまな部位の混合)と肝臓(レバー)が約70㌘入り、肺は約40~50㌘でそれぞれ1000円となっている。

企画からパッケージデザインの制作、ペットフード製造の届出手続きなどに約1年を要した。ジャーキーの生産では、わなにかかって傷ついた部位や人が食べにくい部位、食用に用いられない内臓など3割程度を使用。商品化のために新たに導入した専用の装置で薄くスライスし、乾燥機にかける。「安全を最優先に」と、管理栄養士の指導を受けながら保存に適した条件などを工夫した。

陶子さんはハム(14歳)を飼っており、「茹でた鹿肉などを与えられるが、ジャーキーへの食いつきは違う」という。愛犬家の知人からも「食いつきがいい」「ほかのペットフードは食べなくなった」といった声も聞こえる。

竹内夫妻の愛犬ハムもお気に入りのシカジャーキー

竹内夫妻の愛犬ハムもお気に入りのシカジャーキー



相模原市の中山間地域では、鹿やイノシシなどによる農作物被害が年間350万~650万円に上る。県ニホンジカ管理事業実施計画によると、相模原市(津久井地域)で行った被害軽減目的の管理捕獲は2023年度に120~160頭。多い年(21、22年)には200頭を超えることもあった。銃器を使用できない場所へのシカの進出や定着が進んでいることが課題となっている。

狩猟者の県内全域の登録数は14年頃まで減少傾向となっていたが19年から増加に転じ、近年は1850人以上で横ばい。高齢化とともに人手不足が進んでおり、繁殖に駆除が追い付かず鹿の個体数が増加している地域もあるという。

参考:

余すことなく「命」をいただく/獣害対策の現場に密着(上)

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