県が9月17日に公表した2024年(令和6)年地価調査(7月1日調査)では、相模原市全体の住宅地と商業地で平均変動率が4年連続、工業地が12年連続で上昇した。特に橋本駅南口の商業地が始発ターミナル駅としての利便性に加え、リニア中央新幹線建設の進ちょくによる発展的期待感などを受けて大きく上昇。一方、旧津久井郡では、相模湖地域の与瀬が商業地で1位、津久井地域の中野と三ケ木などが同率で5位になるなど、同じ緑区でも明暗が分かれている。(価格は1平方㍍当たり)
【住宅地】堅調もランク外に
住宅地では、相模原市全体の平均変動率が3・2%(前年2・1%)と上昇率が拡大した。上昇率を区ごとに見ると、緑区2・4%(同2・1%)、中央区5・2%(同3・1%)、南区4・3%(同3・0%)とそれぞれ上昇となった。
緑区の橋本駅周辺では、交通利便性が高いことによる旺盛な需要に加え、リニア中央新幹線事業の進捗による発展的期待感から上昇が見られた。市内の横浜線各駅では、駅周辺部の価格上昇が波及し、バス圏でも地価の上昇が見られた。
個別の地点では、中央区の「中央5―6―5―2」の上昇率が7・8%と市内でもっとも高く、同区の「弥栄2―19―2」(上昇率7・5%)が続く。緑区では「原宿5―10―4」(同6・2%)、「橋本5―2―10」(5・9%)。南区でも「西大沼2―12―3」(同5・9%)、「東林間4―16―3」(同5・7%)などと堅調となったが、上位入りを逃した。
大和市は市全域で平均5・6%(同3・8%)上昇となった。前年は7・0%で県内13位だった「中央2―12―13」は、変動率が12・2%に拡大し2位となった。小田急江ノ島線と相鉄線が乗り入れる大和駅から北に約500㍍の地点で、大和スポーツセンターなどに近い。
同市は、市域の多くが駅徒歩圏にあることに加え、相鉄・東急直通線の開業により交通利便性が向上したことから需要がおう盛で、特に大和駅徒歩圏で継続して強い上昇傾向が見られた。
【商業地】橋本が上昇率9位
相模原市緑区の商業地では、橋本駅周辺地区で駅周辺の整備発展や商業集積の期待感から、「橋本2―3―6」(10・2%)が市内でもっとも地価が上昇した地点となった。一方で、旧津久井郡の下落率がマイナス1・9%(与瀬字稲原411番外2)や0・0%(中野字上森戸225番1外、三ケ木字桜木312番1)となり、区内平均では3区でもっとも低い2・9%に上昇幅を留めた。
中央区はJR横浜線の駅に近い地点で9・0%(相模原5―5―7)や8・4%(矢部2―3―20、鹿沼台2―11―6)など強めの上昇を示した。一方で、「上溝5―1―25」(同2・6%)のように同線から離れるほど上昇率が弱まる傾向がみられ、区内平均で6・8%(同3・8%)となった。
東京23区や横浜・川崎エリアへのアクセス性が良好な南区では、駅周辺の地価の上昇基調が他の区よりやや強く、相模大野駅南口前ロータリーの「相模大野8―2―6」では9・2%と大きく上昇。東林間駅から約130㍍の「上鶴間7―5―1」でも8・7%となるなど、区平均では3区で最大の7・9%(同6・4%)の上昇となった。
市全体としては5・7%(同3・7%)と上昇。橋本駅周辺は、リニア中央新幹線の事業進捗による、駅周辺の整備発展や商業集積の充実に対する期待感に加え、上層階を共同住宅として使用することが可能な地域では、おう盛な住宅需要を背景に、継続して強い上昇傾向が見られた。
【工業地】工業地は当麻5位
工業地では、県全体の平均変動率は前年同様に下落地点がなく、横ばいの地点がなくなり、上昇率が7・4%(同5・2%)と拡大。通信販売関連の貨物業者などの需要が堅調で、物流適地や倉庫適地に需要の増加が続いており、継続して強い上昇傾向が見られた。さらに、消費地のごく近くに置かれる中小規模の倉庫用地などでも需要が増加している。
一方で、製造業が多い工業地では、工場、機械設備などへの設備投資の減退も見られる。県東部では、都内との価格差もあるため、自社倉庫、資材置き場などとして高額な取引状況も確認できる。
相模原市の工業地は13(平成25)年から12年連続で上昇しており、全体の上昇率が5・9%(同5・1%)とわずかに拡大した。区別では緑区6・7%(同4・8%)、中央区5・4%(同4・1%)、南区では6・0%(6・4%)とそれぞれ上昇傾向となった。