15日の公示を前に、衆議院選挙(27日投開票)神奈川14区(相模原市緑・中央区、愛川町、清川村)と同20区(相模原市南区、座間市)の立候補予定者(開催時点)による公開討論会が10日、相模原市中央区上溝で開かれ、動画配信サイトを通じて生配信された。主催者側から投げ掛けられた「今回の選挙で最も訴えたい施策」「出生率の減少とその解決策について」「今後の地域経済と日本の経済について」の3つのテーマを主題に論戦を展開した。相模原青年会議所(JC)と津久井JCが主催。【2024年10月20日号掲載】
▽神奈川14区=相模原市緑・中央区、愛川町、清川村
14区で出席したのは参加表明順で、熊坂崇徳氏(42)=日本維新の会・新人=、長友克洋氏(54)=立憲民主党・新人=、中村圭氏(43)=日本共産党・新人、赤間二郎氏(56)=自由民主党・前職=の4人(以降、発言順)。参政党・新人の先沖仁志氏(48)は、主催者側の連絡にミスがあり欠席した。
一番訴えたい「一丁目一番地」の施策について、出席者4人は「経済施策」で意見を並べる。長友氏は「実質賃金がまったく上がらず、社会保険料や税金が上がる一方」と指摘し、「経済をしっかり立て直す。これがやりたいこと」と述べた。中村氏は「中小企業支援をしながら最低賃金1500円を早期に達成する」とし、社会保険料の国庫負担の割合増加や従業員の労働時間短縮を提案。赤間氏は「生活の安心」と切り出し、「高付加価値化や生産性を高めるためのデジタル化、海外への展開を組み合わせて経済を強くする」と訴えた。熊坂氏は「経済の成長が大切」とし、「消費税、所得税を減税し、個人消費を高めるとともに企業投資もしてもらい経済発展につなげる」と訴えた。
4人が最も訴えた施策で一致した経済施策のうち「社会保障施策」について考えを問われると、中村氏は「財界の内部留保に課税し財源を生み出して、減らない年金を作り基礎年金を引き上げる」、赤間氏は「高齢で働ける人や、女性が社会に進出しやすい環境を整備し、持続可能性を高めていく」、熊坂氏は「2024年は保険料が30%近く増えた。現役世代に不利な制度を抜本的に変えていく」、長友氏は「経営者は社会保険料の負担が大きい。医療介護年金以外にも使われているので直したい」とそれぞれ主張した。
出生率の減少対策について4人は「若者の所得が上がらず、結婚や出産・子育てにつながらない」という見解でほぼ一致する。若者の所得の安定化について、熊坂氏、長友氏、中村氏は非正規雇用の正規雇用化による雇用の安定化とともに税負担の軽減を軸とした主張を展開。これに対し、赤間氏はリスキル(学び直し)によって企業収益が向上し、賃金もアップする方法を主張した。
地域経済について、長友氏は若い力をサポートすることとし、「鳥屋の車両基地への回送線の旅客化を図る。多くの観光客を呼び込み、経済発展の拠点としたい」と主張した。中村氏は「消費税を5%に減税し、複数税率をやめる」と述べたほか、地下水の枯渇による農業への影響を理由としたリニア建設工事の即時停止を訴えた。
また、赤間氏は「人や企業を呼び込み、消費してもらうことで外貨を稼ぐ。リニアの新駅や車両基地をいかに地域経済に結び付けるか示す必要がある」と述べた。熊坂氏は「中央区や橋本は発展しているが、山沿いでは人口が減少している。小田急多摩線延伸を進めるとともに、観光資材を活用していく」と意見した。
▽参政党の先沖氏(討論会と同じテーマで)
14区の公開討論会に出席できなかった先沖仁志氏(48)=参政党・新人=に、本紙は討論会と同じテーマで質問取材を行った。一番訴えたい政策について、先沖氏は「疲へいした経済を立て直すための経済政策。具体的には消費税5%への減税と積極財政。最低賃金の引き上げは中小零細企業にとって大変厳しい。減税で手取りが増えたのと同じ効果があり、消費を回復する」と述べた。
出生率の減少対策については、「不妊治療、出産、育児はすべて無償化。子供は将来の消費者、納税者となる。そこに投資することは十分もとがとれる政策」と語った。
地域経済については「消費を上げるには所得を上げなければならない。すべてのじゃまをしているのが消費税」と訴えた
▽神奈川20区=相模原市南区、座間市
20区で出席したのは参加表明順で、大塚小百合氏(44)=立憲民主党・新人=、金子洋一氏(62)=日本維新の会・新人=、甘利明氏(75)=自由民主党・前職=の3人(以降、発言順)。
一番訴えたい政策について、金子氏と甘利氏が「経済政策」をあげ、大塚氏は「社会保障問題」をあげた。金子氏は「まずは減税。これだけの物価高を下げる消費税5%への減税を絶対にやるべき。消費減税は自民にも立民にもできない政策」と述べた。甘利氏は「物価を超えて給料が上がる社会。国内企業の内部留保の約半分160兆円を賃上げや投資、研究開発に使い経済を回して消費を伸ばす」と訴えた。大塚氏は「持続可能な社会保障制度の構築。実質賃金が上がらないのは、社会保障費の増大が原因。介護人財も不足する中、高齢者や子育て世代が希望を持てる環境を構築していく」と語った。
アベノミクスの経済政策について問われると、同政策を推進した甘利氏は「成長無くして財政再建なし。増税ではなく経済を大きくして、財政再建を吸収していく政策がアベノミクス」と説明した。大塚氏は「国債を増やし経済を回した結果、今の深刻な円安の状況。外国人材も日本で働くことに魅力を感じていない」と批判した。金子氏は「アベノミクスの金融緩和は大賛成。金融緩和により雇用が伸びた。金融緩和はもっと続けなければならない」と肯定した。
出生率の減少対策について、大塚氏は「子育て真っ最中だが、教育費を考えるともう1人産めない。大学を含め教育の無償化は子供を産む動機として非常に大きい。また保育園から小学校にあがった際、長時間預かってくれる学童保育が少ない」と指摘し改革が必要と訴えた。金子氏は「年少扶養控除(16歳未満の扶養親族がいる納税者に適用される控除)を復活させたい。お金を吸い上げて給付や手当てに回すのではなく、減税をして子供を育てやすくしていく」と述べた。甘利氏は「減税は金額に届いている納税者しか恩恵が受けられない。給付を厚くしていくことが平等」と反論し、「不妊治療の保険適用は自らの議員連盟の提案が採用された。児童手当も第3子以降は月額3万円に拡充された」と実績を訴えた。
地域経済について、甘利氏は「インバウンド(訪日旅行客)により、地域の特性を経済に繋げていく。また最先端技術の研究拠点を呼び込み、国内外の投資によって地域活性化に繋がる」と話した。大塚氏は「人口が減少し、人工知能(AI)が発展していく中で、生き残るのはクリエイティブ・マネジメント・ホスピタリティの3分野と言われる。能力や生産性をあげる人への投資、リスキリング(学び直し)が非常に重要」と述べた。金子氏は「心配しているのは今の政権の金融政策。日銀が金利を上げれば、投資が止まり、地域経済にお金が回らなくなる。金利正常化のために、会社が潰れたらたまらない。金融緩和と積極財政でいくべき」と訴えた。