奥相模エリア(旧津久井郡や山梨県等)の地域づくり活動の円滑な推進を図ることを目的とする「(仮称)奥さがみ・郡内広域連携協議会」は5日、山梨県上野原市役に隣接する市文化ホール(同市上野原)で、日本総合研究所の藻谷浩介主席研究員を講師に「中山間地域の維持活性化」をテーマに勉強会を行った。ゲストに、レーシングドライバーで登山家、自転車競技選手の片山右京氏、旧藤野町出身の山岳写真家の三宅岳氏を招き、上野原市の村上信行市長をはじめ、地元選出の議員のほか、同エリアで地域活動を行う有志など約60人が出席した。【2024年11月10日号掲載】
発起人代表あいさつで相模原商工会議所副会頭の原幹朗氏は「神奈川と山梨、各自治体の境を意識するのではなく、われわれは『母なる大地』の桂川や道志川の水源、山並みに共通に生きている。共通する地域でお互いの新しいネットワークを構築し、広域観光ももちろん視野にある中で、この前段として関係づくりのための協議会を立ち上げた」と述べた。
講演で藻谷氏は、ペリー来航3年後の1856年に描かれた「武蔵国全図」を紹介。地図は北が上ではなく江戸が左、右上に山地が描かれている点を指摘。藻谷氏は「右上が上座。川より太い道はない。当時、世界最大の人口100万人都市の江戸を支えたのは、水源と森林のある山地だった」と説明。さらに「東海道は箱根の峠がきつく、京都など上方の最新の文化や物流は、甲州街道で奥相模に入ってきていた」と解説した。
後期高齢者や乳幼児数の増減率などのデータを示し、2050年の日本は一般的に言われているような「過疎地は消滅に向かい、都市だけが栄えている」は間違い。「1つ目は地方の若者が減りすぎて都会への流入も減り、都会も消滅に向かうのが最悪のケース」「2つ目は過疎地から先に高齢者が増えなくなり、若者を受け入れる一部の過疎地は、子供が再増加して都会より先に再生に向かう」と指摘した。
ゲストの片山氏は「非常に勉強になり、データにショックを受けながら勇気をもらった」と感想を述べ、今後のモビリティ(移動手段)としてモーター付きの自転車の可能性などを語った。
山岳写真家の三宅氏は「登山者の中心世代が高齢化している中で、中山間地の低い山や峠が今後のターゲットになっていくのではないか」と述べ、奥相模の登山需要のポテンシャルについて語った。
相模原市緑区選出の山口美津夫県議(自民党)は本紙に「今回が初めての試みだが、こうした会は必要だと思う。今の子供たちは水はペットボトルで買うもので、水がどこからきているのかを知らない子が多い。5つの湖がある水源地をもっと広く知ってもらう必要がある」と感想を述べた。
今後の会の運営については、各地域から幹事を選出し、幹事会を開催して運営方針・方法などを検討。広域連携の勉強会などを行い賛同者の輪を広げていくとする。