さがみはら産業創造センター(略称=SIC、相模原市緑区西橋本5)は今月から、SIC1の3階に分析や軽微な組み立て作業など、薬品や油脂など液体を用いないドライ系の研究開発を少人数で行うための貸室「スモールドライラボ」を設けた。計5室のうち4室は入居企業が決まり1日から順次業務を始めており、好調なスタートを切っている。残り1室の契約につなげたい考え。【2025年3月10日号掲載】

3月から新たに設定した「スモールドライラボ」
スモールドライラボは、13室あった「スモールオフィスB」(17.6平方㍍=奥行5.5㍍、幅3.15㍍、高さ2.4㍍)のうち5室の仕様を変更したもの。主な改修点は床をタイルカーペットから、帯電防止や耐薬品性のあるフロアタイルに変更したこと。ラボ系のフロアに採用しているエポキシ系塗床より低コストでメンテナンス性も良く、耐久性にも優れる。また、必要に応じて延長して使用できる「リーラーコンセント」も新たに備えた。
1階のラボや2階のセミラボA・Bと異なり給排水設備や動力電源などは備えないが、これらを必要としない研究開発などを行うスタートアップを取り込みたいという。
スモールオフィスBはこれまで1~2人など少人数でのスタートアップや、2階のセミラボを利用する企業がバックオフフィスなどとして利用していたが、コロナ禍を境に近年は1年間の空きが続くなど空室が常態化。「シェアオフィスやコワーキングスペースといったフレキシブルオフィスの市場規模が拡大したことや、テレワークなど在宅での操業環境が整ったため」とみているが、決定的な原因はつかめていない。
SIC総務部の大谷裕一さんは「当初人気がなかったのは(スモールオフィス)Aだが、現在は満室。Bは募集から1~2カ月で入居が決まる人気だったが、退去から1年間空いたままという部屋が2室ある」と首をかしげる。
2月までに5室の退去が決まったことで、新たなコンセプトの貸室の設置を急いだ。機能性は向上しつつ、家賃は税と共益費込みで7万620円(取材時)に据え置いた。大谷さんは「需要が分からないので試験的な意味合いが大きい。大きなリスクはないが、挑戦的な試みではある」と語る。
研究開発ができるラボの需要は高まっており、入居企業のうち約8割がものづくり系企業。特に半導体や部品開発設計などドライ系の研究開発での創業を希望する問い合わせが多い。「事務系の貸しオフィスは近隣の駅前にもあるが、ラボとして利用できる貸室はSICの強み」(大谷さん)。
入居・契約が決まっているのはがんの再発防止治療を研究する医療系企業、再生可能エネルギーの蓄電効率向上技術を研究する企業、次世代電池を開発する企業の計3社。2社が1室ずつ、1社が2室をつないで使用する。
これまでスモールオフィスB(最長7年)やデスク10(シェアオフィス)を利用していた利用者には、事業規模の成長に応じて借り換えする企業もある。スモールオフィスAや残るBのドライラボ化は需要をみて判断する。