相模原市は10日、緑区橋本の杜のホールはしもとで、成長意欲の高い起業家を地域から輩出することを目指しスタートアップを支援する「相模原アクセラレーションプログラム(SAP)」や、市内企業の新事業開発を支援する「オープンイノベーションプログラム」の成果発表会を開いた。支援制度を活用し市内で実証実験を行う市外企業もあるが、市内への移転や市内に事業所を置いて活動する企業もあった。【2025年3月20日号】

冒頭で市内での創業を呼び掛ける本村市長
本村賢太郎市長は冒頭のあいさつで「〝起業するなら相模原〟とこの地からスタートアップなどベンチャーマインドを生かしてチャレンジできる相模原に変えていきたい。市の強みは中小企業で成り立っている街なので、起業したら相模原から出ずに市内で操業してほしい」と呼びかけた。
2022年度に始まり3年目となったSAPは、市の地域経済のさらなる発展のため、優れたアイデアを持つ成長意欲の高い人材を伴走支援し、将来的に市内で株式公開等を目指す起業家を輩出するとともに、地域全体で起業家を育てるという意識を醸成することが狙い。
SAPに採択されたのは、JAXA発スタートアップのペネトレーター(東京都文京区)や、さがみはら産業創造センター(相模原市緑区西橋本)内にオフィスを構えるヴァンウェイブス、麻布大学生命・環境科学部特任助教の中舘美佐子さんら11者(順不同)。子供向けに社交ダンスと学習を組み合わせたスクール事業の展開を考える市内事業者のほか、相模原市に本社を移転する計画の企業もあった。
ペネトレーターは、人工衛星で取得した地理データを元にAI(人工知能)で不動産情報を解析し、法務省の登記簿と照らし合わせて空き家判定を行う仕組み「WHERE」を開発している。
津久井地区で行った実証では、県営水道の水道開栓データで閉栓していた家屋1200戸のうち、579戸を空き家と判定した。水道開栓データ側に枝番が付いていない住所があり、枝番があれば同システムのより高い精度が証明される可能性があると見込む。
ヴァンウェイブスは、市内産木材「さがみはら津久井産材」を使い、構造体から内装まで六角レンチ1本で組み立てることができるボックスサウナを開発する。サウナ用途だけでなく、防音室や書斎など「秘密基地」のような幅広い用途に応用できる拡張性のある空間設計とした。
同製品は市内のハウスメーカーや商社などを通して展開する。調査では家庭用サウナの購入意欲のある人は、もっとも利用するサウナへの移動時間が短い傾向があったという。
市内への移転を考えるのはサケボトラーズ。ボトル缶日本酒の企画・販売を通し、日本酒を気軽に楽しむ習慣を提案している。市内で醸造される酒を使った市のホームタウンチームとコラボ日本酒を検討しており、相模原の「スポーツのまち」という特徴をアピールしたい考え。
同社の鈴木将之社長は「新しいことは相模原市を本拠とする4チームと一緒に、相模原で醸造されているお酒でやりたい。このまちをよく知った上でモノを作りたい」と話した。
このほか、「すりおろすと粘りがあり香りが良く寿司に向くが、栽培が難しい」というわさび「真妻種」の40フィートコンテナに収まる栽培モジュールを開発する企業などユニークな取り組みもあった。相模原市内でも1960年代半ばまで下溝の古山地区で栽培が盛んだったことに着目し、農業ビジネスへの参入を考える市内企業数社への提案、交渉を進めているという。
オープンイノベーションプログラムは、新規事業開発や自社の課題解決に意欲があり、新たなビジネス展開にむけた実証事業の取組に挑戦する市内企業(KYB、デュプロ、東プレ、日本ゼトック)と、必要な技術・ノウハウなどを持ったパートナー企業を募集、マッチングする取り組み。市内への新たなプレイヤーの呼び込み、市内企業の新たな繋がりの創出、相模原市におけるイノベーション創出環境の形成を目的としている。