国土交通省が3月18日に発表した2025年公示地価で、相模原市全体において住宅地、商業地、工業地の全用途で平均変動率が4・8%増となり、4年連続で上昇した。緑区の中山間地域(相模湖、津久井)では住宅地と商業地で下落に歯止めがかからない。大和市では、直通線の開業などで利便性が高まり、小田急・相鉄の2社が乗り入れる大和駅の徒歩圏内で住宅地2地点の上昇率が急上昇している。【2025年4月1日号】
□駅前で堅調続くが…
商業地では相模原市の平均変動率が6・6%(前年5・7%)と上昇率が拡大した。上昇率を区ごとに見ると、緑区4・6%(同4・4%)、中央区7・4%(同7・0%)、南区7・4%(同5・4%)とそれぞれ上昇した。
個別の地点では、橋本駅南口から国道16号方面へ約350㍍の「橋本2丁目10―24」が9・9%(同10・6%)となった。低中層の店舗・事務所兼共同住宅などが立ち並び、低金利の継続やリニア事業進ちょくに伴う発展的期待感などで上昇基調。「橋本3丁目30―1」9・2%(同9・4%)、「西橋本5丁目9―1」7・3%(7・1%)でも堅調が続く。
同区では一方で、国道20号の相模湖駅前交差点から藤野方面に約50㍍の「与瀬本町8番1」は、マイナス0・3%(同マイナス0・7%)と下落率が縮小したが、県内で唯一の下落地点となりワースト1位となった。JR中央線相模湖駅に近く国道沿いの近隣商業地であるが、観光需要は高いとは言えず人口減少も進んでいるため、下落傾向が続くとみられる。
旧津久井町中心地を通る県道鳥屋川尻線沿いの「中野字中村302番1」(橋本駅から8・9㌔)の地点が0・0(同0・0%)%で、ほか6地点とともにワースト2位となった。繁華性が劣る中野地区の旧道沿いの近隣商業地域。圏内の多くは人口減少、高齢化が進展し、圏外の郊外型店舗への顧客流出などもあって繁華性が低下し、出店需要は弱い。
橋本駅周辺では、橋本駅の周辺居住者、駅利用者を対象とする近隣商業地域であるが、将来のリニア新駅設置や開発に対する期待を織り込んだ潜在需要は強い。駅に近く平坦で、上層階を共同住宅として使用することが可能な地域では、おう盛な住宅需要を背景に継続して上昇傾向にある。
中央区では「相模原5丁目5―7」9・9%、「相模原2丁目2―17」9・8%(同9・0%)など。マンション素地としての需要や、相模原駅北口地区周辺の再開発に伴う効果も期待されるが、行先のやや不透明さで価格帯の把握が難しい。
南区、小田急相模大野駅北側の「相模大野3丁目12―15」が市内の上昇地点でもっとも大きい15・0%(同7・0%)となった。伊勢丹相模原店の撤退で駅前商店街の空洞化が進んだが、投資適正の高い物件への需要は根強くコロナ禍後の経済活動の正常化を背景に上昇基調となっている。
□大和駅付近需要続く
住宅地では、大和市全体で7・3%(同5・8%)となった。市域の多くが駅徒歩圏にあることに加え、相鉄・東急直通線の開業で交通利便性が向上しており、特に大和駅徒歩圏の需要がおう盛で、継続して強い上昇傾向が見られた。
県内の上昇率順で前回9位だった「深見台4丁目3―5」が9・8%(同9・4%)で7位に、6位だった「深見台2丁目5―3」が9・7%(同)と横ばいで9位となり、昨年に続いてランクインした。小田急江ノ島線と相鉄線を利用できる大和駅の徒歩圏内で、都内や横浜に通勤するサラリーマン層の需要が強い。
相模原市では、都内との価格差や人口増加などを背景に、交通利便性が高い住宅地域を中心に需要が堅調で、市全体で4・3(同4・0%)と上昇率がやや拡大。緑区3・3%(同)、中央区4・9%(同4・3%)、南区4・5%(4・3%)とそれぞれ上昇。ことしは、市内の地点で上昇率順上位はなかった。
橋本駅周辺の「橋本6丁目42―12」では、5・9%(同3・7%)となった。交通利便性が高いことによるおう盛な需要に加え、リニア中央新幹線の事業進捗による発展的期待感から、上昇が継続している。市内の横浜線各駅においては、駅周辺部の価格上昇がバス圏にも波及し、地価の上昇が見られた。
市内の上昇率最高地点は中央区の「高根2丁目17―16」8・1%(5・7%)で、南区の「上鶴間7丁目17―29」8・0%(5・0%)が続く。いずれも市内や隣接市のほか、一部東京圏からの一次取得者層の需要が根強い。
JR相模湖駅から約4㌔離れた「千木良字柳馬場431番1」は、旧津久井郡と周辺に地縁性を有する地元在来者が典型的需要者。交通、生活利便性が劣り、人口減少、高齢化の進行による構造的要因で衰退している。マイナス0・3%(同マイナス0・7%)と下落率が縮小したが、順位がワースト4位(前回9位)となった。
□物流需要で県央堅調
工業地では、厚木市内の「緑ケ丘5―1―2」(オーマイ厚木工場)が10・7%(同14・8%)で5位(同3位)になった。相模原市内は上昇率上位には入らなかったが南区が8・3%(同7・9%)、緑区が6・2%(同5・8%)、中央区6・1%(同5・2%)の上昇となり、全体で6・5%(同5・7%)となる堅調ぶりが続く。
通信販売市場の拡大で物流適地は需要が堅調で、継続して強い上昇傾向がみられた。消費地に近い中小規模の倉庫用地でも、ラストワンマイルの拠点としての需要の増加により地価の上昇が見られた。製造業が多い工業地でも需要が堅調で、継続して地価の上昇傾向がみられた。