電力と排熱を利用することで省エネルギー、CO2排出量削減が図れるコージェネレーションシステムは、未来志向のエネルギー供給システムである。ただし、その導入効果は、原油価格の変動や、施設の規模、用途、電力需要等に大きく左右されることから、今も着実に普及が進んでいるとは言い難い。
創業以来四半世紀、コージェネ用をはじめとする内燃力発電設備の製造・販売を基幹事業にまい進してきた⑭ケイ・エス・アイ(相模原市中央区田名3892-2、黒澤久夫社長)は、そんな現状を見据えながら、今後歩むべき道を模索している。
創業前の四半世紀、黒澤社長は東京電力で発電所の保守・点検・整備に従事。うち15年ほどは離島担当として年間300日、伊豆七島のいずれかに出張というハードな生活を送った。
その後内地勤務に異動し生活は落ち着いたが、起業への志を共にする同僚、知人との巡り合いから独立を決意。1986年に、各種機械・設備の設計のみ請負う事業を伊勢原で起ち上げ、翌87年に法人化した。
その後、大口顧客だった大手建設機械メーカーから製造まで事業を拡張するよう要請を受け、90年に現在の本社工場を開設し移転。ガスエンジン及びディーゼルエンジンによるコージェネシステムを皮切りに、非常用・常用の発電設備やポンプユニットなど、主としてエンジンを動力源とする各種機械・設備機器を次々と手掛けることで業績を上げてきた。
またこの間、積極的な新規顧客開拓を通じて、売り上げの25%以上を占めるような依存度の高い大口顧客を抱えないよう努めるなど、健全経営に向けて体質改善を図った。実際、このところ世のコージェネ事業が伸び悩む中で、独自の超低騒音技術を駆使した常用・非常用発電装置が好評を博し、同社の基幹事業の一つに成長するなど、顧客増、営業品目拡大の効果が現れている。
こと非常用発電装置は気象庁や警察、NTTなどが管理する公共性の高い設備として全国規模で導入されており、償却年数に準じた入替えがコンスタントにあることから、毎年一定の受注が見込める。加えて2年前の東日本大震災以後は、停電時に交差点の信号機の機能不全を防ぐ小型非常用発電機など、防災用機器の特需が発生し、今年2月の決算では過去最高12億5000万円の売り上げを記録した。
特需のピークは過ぎたが、非常用発電設備の需要はますます高まるものとみられることから、同社では新たな販売ルート開拓の道を探っている。
「これまでは取引先から発注されたものを作ってきたが、将来的には一般事業所等への直販を考えている」と黒澤社長。
それを実現するには、各種法制度や業界のしがらみなど、クリアすべき課題も少なくないが、とりあえず同社では今夏ISOを取得。新たな一歩を踏み出した。(2013年9月10日号掲載)