PQI、攻守バランスに優れた強い組織づくりを構築/製品検査を主とした受託請負・労働者派遣


優れた攻守バランスをめざす金井社長

優れた攻守バランスをめざす金井社長


 野球やサッカーなどで強いチームに共通するのは「攻守のバランス」。これは企業経営にも大いに当てはまる。
 製品検査を主とした受託請負、労働者派遣等を展開するPQI(相模原市中央区相模原、金井義文社長)は、強い組織づくりに向け攻守バランスを整えながら前進し続ける企業だ。
 同社は1974年、金井社長の父・剛氏がカナイ加工として設立。当初の基幹事業は電線やワイヤーハーネスの加工で、昭和電線電纜(現昭和電線ホールディングス)との取り引きが9割以上。80年代半ばには、日本発条から金型加工と検査を加え、以後しばらくは二社の下請けとして成長した。
 ところが、バブル崩壊後の長引く景気停滞、加工事業の国外流出等により、先行きに暗雲が立ち込める。そんな矢先の98年、それまで家業の承継に全く関心のなかった二代目が前職を辞し、家に戻ってきた。
 「父の依頼で財務を確認したところ、二社への取引依存度と人件費比率の高さに驚いた。とりあえず営業職を新設し、そこから社内の様々な業務改善に着手しようと思った」
 二代目とはいえ、新入社員がいきなりリストラなど進められない。そこで営業の傍ら、ベテラン技術者たちの教えを請いながら機械加工等の実務を修業。その上で、慣行となっていたやり方の非効率性を現場からの目線で指摘するとともに、仕事に基準を設けて報酬に出来高制を導入した。抵抗もあったが、QC活動の視点から地道に理解してもらうよう努め、38%もあった人件費比率を10%ダウンさせた。
 一方、営業面では、当時最盛期を迎えつつあったパソコン周辺機器のワイヤーハーネス加工を日本モレックスから獲得するなど、着々と新たな取引先を増やしていった。
 さらに05年からは、労働者派遣事業を開始。
 「既存顧客から、外注に出す時間がないので人手を貸して欲しいとの要望があった。最初は出向で対応していたが、人員、期間とも多大なので、派遣で対応することにした」
 ここで同社の戦略が見事なのは、当初派遣していた社員を新たに募集した人材と入れ替えながら徐々に社内に戻していったこと。その際、専任の人材にも社内OJTを経てから派遣していたことで、受け入れ先からの評判も高かった。
 こうして人材派遣事業の最盛期でも受託事業への対応を伸ばすことができたことに加え、法改正等の影響で派遣事業が急下降後も、派遣人材への高評価が派遣先から新たに受託請負を得るきっかけとなった。
 09年には、社名、社長とも一新。自社工場内での受託請負、派遣、短期出張請負という三つの事業形態を軸に、二ケタの主要顧客を抱え、自動車部品やモバイル、コネクター、基盤といった多様な製品分野に対応するなど、攻守バランスに優れたチームとしてますます躍進しつつある。
(矢吹 彰/2013年12月1日号掲載)

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