インテリア ラ・カーサ、パート勤めが起業への転機/戸建住宅、マンションのリフォーム・内装工事


「人のつながり」を大切にする三輪社長

「人のつながり」を大切にする三輪社長


 起業に至る経緯は人それぞれ。一般に後進への有益な道標とされるのは、確固たる信念のもとで計画的に実行されたものだろうが、そんな事例はそれほど多くはない。
 一方、道標とはなり難いが、人生の機微の中で、ある時ふいに決意された起業。これが意外と多いのである。しかも、計画的でなかったことがマイナスに働くとは言い切れない。
 戸建て、マンションのリフォームや新築住宅の内装工事を手掛ける⑰インテリア ラ・カーサ(相模原市中央区中央4-5-6)は、三輪是美社長以下社員数5人の小所帯ながら、創業17年目を迎え年商1億円超の堅実経営を続けている。
 山形市に生まれ育った三輪社長は、地元企業で17年間事務職を務めた後、結婚退職して上京。10年余りの主婦業を経た後、家庭事情からパート勤めに出たことが人生の大きな転機となった。
 勤め先の町田市内の内装工事会社では、経理に明るい豊富な事務キャリアが買われ、間もなく正社員となり、数年で常務に抜擢された。一見シンデレラストーリーのようだが、多忙を極める社長がほとんど不在の事業所内で、経理から雑務までを一手に引き受ける激務。
 「日曜日以外は5年間皆勤。多忙の日は、夕方一旦帰宅して家族の食事を作り、会社に戻って残業という生活。常に働いているから常務」と、三輪社長は当時を振り返り苦笑する。
 結局、社の方向性について社長との意見の食い違いから1997年に退社。自宅を拠点に、カーテンや壁紙など室内装飾を個人事業として始めた。
 前職での得意先は全て置いてきたが、実質、会社の屋台骨を支えていた三輪社長の消息を求めて方々から連絡が入るや、紹介客が次々と増えていった。そればかりか、前職での工事職人とのつながりも復活。今一つの景気の中、3年で法人化に漕ぎ着け、現事業所を構えた。
 法人化して間もなく、チラシを撒いたこともあったが、一回きり。紹介客等を介した口コミが着実に広がり、現在では営業をしなくてもコンスタントに仕事が入る。
 「当社の強みはリーズナブルな価格と迅速な対応、そして女性ならではの目配りや気配り」と、三輪社長は話す。「安価なのは材料の品質を落としているのではなく、工事費をはじめ、自社利益を抑えているから」とも。
 同社ではここ数年、年間150~200件の新築内装工事、10~15件のリフォームを手掛けており、対応し切れないほど受注する気はないという。
 「やはり大切なのは人と人とのつながり。相手を信頼することで、自分も信頼される。前職の会社、取引先、顧客、社員がいて現在の自分がある」
 当初の人生設計では全く考えられなかった起業という一大イベントが突然湧き起こったことを、三輪社長は今も不思議がりながら、シニア期の新たなモチベーションとしているようだ。(矢吹 彰/2013年12月10日号掲載)

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