ミシュランガイドで高評価の料理店が増え、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、世界でも指折りの食文化を持つ国でありながら、食料自給率は年々下がる一方。スーパーマーケットの食品売り場には、乾物だけでなく生鮮食品でも輸入品があふれる。それが日本の現状だ。
十把一からげに国産のほうが上質とは言えないが、どちらを選ぶかは、ある意味、価格をとるか品質をとるかという選択肢に基づく。
そんな中で、ニッコー(大和市代官1-10-3、山﨑雅史社長)は、1984年の創業以来、一貫して国内の産地直送原料のみを使った食品の開発生産・販売を続けている。
創業した山﨑社長の父・貞雄氏(現会長)は熊本県八代市の豆腐店に生まれ、公的機関で大豆や豆腐の研究をしながら大学を卒業。大手加工食品メーカーで14年間開発に携わった後、起業した。
創業早々、都内生協への納入をきっかけに以後、大手居酒屋、大手百貨店、全国宅配業者、JA、外食産業大手、さらに学校給食など、着実に顧客を増やしてきた。成長の裏には、貞雄氏の人脈はもちろん、品質に対する並々ならぬこだわりがある。
同社が製造・販売するのは中華まんじゅうや餃子、肉だんご、グラタンなど、いわゆる総菜の冷凍食品だが、「安く調理が簡単でそこそこおいしい」だけの巷の製品とは一線を画す。
原料とする食材はすべて無農薬・減農薬栽培、非遺伝子組み換え飼料で育てた農畜産物で、国内の産地直送。化学調味料をはじめ添加物は一切使わない。その上で衛生面では、農水省や厚労省、冷凍食品協会よりはるかに厳しい品質基準を独自に設定する徹底ぶりだ。
「自分の子どもに安心して食べさせられる食品を作る」という同社の社是と、品質に厳しい納入先との信頼関係がそれを裏付けている。
もちろん、そのために味を犠牲にしては消費者からの支持は得られない。リピーターを増やすことこそが成長につながる。
「商品ラインナップは100種ほどで、毎年80~90品ほど新規開発し、状況に応じて入れ替えている」と山﨑社長は話す。
こだわりの品だけに固定客は多く、取引先との関係は安定している。このため景気に業績が大きく左右されるようなことはないが、1パック当たりの量を変えるなど、生活スタイルの変化を商品づくりに反映している。
また、同社では3年前から綾瀬市内に1万3000坪の農地を借り受け、自社スタッフの手で野菜づくりを行う一方、昨年、会長の故郷八代に工場を開設するなど、自社ブランドの醸成、確立に本腰を入れ始めた。
「自社生産の作物はそれを生かした商品づくりを、熊本工場は自然環境が抜群なので、家族でレジャーがてら工場見学に来てもらえるような仕掛けを検討している」と同社長。
激しい時流に右往左往せず、地道で夢のある取り組みではないか。(矢吹 彰/2014年6月20日号掲載)