何の自覚症状もないのに、定期検診で気になる数値が示された。一方、体調が思わしくないので検査を受けたが、何ら異常は見つからなかった。
法的な用語ではなく一般にはなじみの薄い概念だが、このような状態を東洋医学では「未病」というそうだ。
こと生活習慣病の予備軍を中心に、未病の人はそこかしこにいる。が、その大半は積極的に通院しないし、医療機関側も日々の診療に追われ、主要な医療サービスの対象とみていないのが現状だ。
小田急江ノ島線・高座渋谷駅西口近くのドクターあいサプリメントパーラー(大和市福田2036の6)は、そんな未病の人をはじめ、医療サービスの対象となりにくい人々をターゲットに、生活環境の改善など健康維持のノウハウを提供するユニークな施設である。
運営するあいブリーズ合同会社の実質的な代表である増田愛一郎氏は、同パーラーにほぼ隣接するビルで泌尿器科・皮膚科のあいクリニックを営む開業医だ。
パーラーをクリニックのサイドビジネスと見る向きもあろうが、増田氏は「両者は人の健康というものを考える上で相互補完、車の両輪のような関係」と否定する。
東海大学医学部、同大学院を経て、同大附属病院等で泌尿器科の専門医として13年間勤務。退職後は2年ほど、一般内科、創傷外科、東洋医学、神経ブロック、一般及び美容皮膚科、小児科のほか、抗加齢医学、栄養学、スポーツ医学など幅広く学び、2007年3月にクリニック、11月にパーラーを相次いで開業した。
「医師の役割は専門の病気を治すことだけではない。多様な症状を訴える患者に対し、いかに〝医療の納得〟を提供できるかが重要」
こう話す増田氏は、高齢者の心と身体の自立促進による健康長寿社会への貢献という理念とともに、患者の立場に立ったコミュニケーション重視の診療方針を掲げ、一方的でなく開かれた医療の提供に努めてきた。
ただこうした取り組みも、クリニックという枠組みの中では限界がある。そこで、未病の人をはじめ、患者以外にも広く受け入れることができるサプリメントパーラーという発想なのだ。
「健康でいられるノウハウを伝える発信基地」と同氏が位置づけるように、ここは単なるサプリメント販売店ではない。栄養士によるカウンセリングが無料で受けられるほか、健康に関する講演やフィットネス教室等を定期開催。地域の人々のちょっとしたコミュニティスペースにもなっている。
サプリメントといえば通販が主流の今、ビジネス的には効率的とはいい難い形態だが、増田氏に動じる様子はない。
「自分の夢の実現に向けて始めたことなので、経営が少々苦しくても変えるつもりはない。健康に関心のある人が気軽に立ち寄れる施設として口コミで広がってくれれば」
高座渋谷の広い空の下、モダンな店内で気さくなスタッフが迎えてくれるヘルシーな施設である。(矢吹 彰/2014年7月1日号掲載)