「産業を発展させるには、アップルではなくウインドウズ的環境が必要」
サーボモーター用制御装置を開発・製造・販売するコロンバス精機(相模原市緑区西橋本5の4の21SIC内)の本宮輝明社長は、複雑な事情を抱える自社製品の特長を説明する際、こんなたとえから入る。
ハードとソフトを社内で一体的に開発するアップル社のパソコンは、統一された操作性で初心者にも使いやすいが、ハードの選択肢が狭く、ユーザーが独自のアプリソフトを作るのも困難で拡張しにくい。これに対しウインドウズ機では、原則OS以外の制約がないため、操作性の統一感は欠けるものの、ハードの選択肢が広い上に、独自のアプリも自在に開発できる。
つまり、サーボ機構システムの業界が〝アップル的〟な状況にある中で、同社は〝ウインドウズ的〟なシステム環境の創出に取り組んでいる、と言いたいのである。
本宮社長は東海大大学院を卒業後、材料試験機、金属加工機、電子機器等のメーカー3社で計30余年、サーボ関連機器・装置の開発、設計に携わった。キャリアの中で〝アップル的〟な状況に疑念を抱き、それが創業の動機になった。
多くのメーカーから様々なサーボモーターがラインナップされているにもかかわらず、それらを制御するアンプ、コントローラーは各メーカーの自社製が定番。加えて、これらは専用ネットワークによって連携作動するため、結果的にモーター、アンプ、コントローラーは同一メーカー品をセット購入するしかないのが実情なのだ。
「セット購入すれば、設計作業自体は容易かもしれないが、仕様の範囲内なので自由度が失われる上、無駄な機能へのコストが発生するなど割高になる」と本宮社長は問題点を指摘する。
同社が自社製品の第一弾としてリリースしたサーボモーター用アンプは、従来型アンプからモーター制御の機能を分離しコントローラー側に委ねることで、特定の用途に特化しない優れた汎用性と性能、低価格を実現したもの。主電源が一般的に使用されるDC24Vのみの仕様なので、装置の出力規模に制限があるが、DCブラシ付及びブラシレス、シリアルエンコーダ付ACサーボなど各社の様々なモーターとコントローラーが自由に選択できる。
製品第二弾は、アンプ同様に汎用性が高く、複数のモーターを同時制御できるコントローラーを予定していたが、サーボ演算やモーター制御でユーザーのプログラミングを支援するツールの提供を優先させることにした。
「営業を通じて、まずは 〝ウインドウズ的〟なシステム環境の優位性を技術者に理解してもらうことが重要だと分かった。その取り組みに支援ツールは不可欠」
創業して半年余り。還暦を迎えた本宮社長のセカンドライフは公私ともに始まったばかりだ。
(矢吹 彰/2014年9月10日号掲載)