山口真空、国内外を問わず 全メーカーの真空ポンプに対応/真空ポンプのメンテナンス、中古販売


「若手技術者の育成が使命」と山口社長

「若手技術者の育成が使命」と山口社長


 メーカーや研究開発型ではない中小企業が、大手傘下に入ることも大口顧客を抱えることもなく独力で歩むには、相応の気概、覚悟が要る。

 真空ポンプのメンテナンスを手がける山口真空(相模原市南区大野台5の16の34)は、そんな立ち位置で長らく激動の世を生き抜いてきた。ひとえにそれは、創業者である山口祐一社長の頑固で人情味あふれる職人気質による。

 「他人に指図されるのが嫌い」「仕事は一人でするほうがいい」

 山口社長は、生来の独立独歩タイプ。職歴が建機オペレーター、運送ドライバーというのもうなずける。

 80年頃、自宅近くの真空ポンプのメンテ会社が人手不足で、正社員の誘いを受けたが、独立前提の見習いとして働くことにした。

 81年、個人商店として創業。前勤務先から出来高制で仕事を受注した。一方でメーカーにも積極的に出入りし、貪欲に技術を学んだ。

 しばらしくて半導体大手系列の真空装置メーカーに見込まれ、次々と顧客の紹介を受けるようになる。資本関係はないものの、迅速確かな対応で信頼を獲得し業績を伸ばした。

 ところが90年代半ば、厳しい業績悪化に見舞われた同メーカーがリストラ社員の雇用を求めてきた。受け入れるには自社の従業員を解雇しなければならない。山口社長は拒否。自ら取引関係も断った。

 こうして大口顧客を失ったものの、他の半導体関連の装置メーカーを積極的に新規開拓し、数年で再び上昇気流に戻した。

 以後、堅実な経営でシリコンサイクルを乗り切ってきた同社だが、08年のリーマンショックの衝撃は別格だった。

 「世の産業構造そのものが変わってしまい、半導体業界以外に目を向ける必要に迫られた」と山口社長は振り返る。

 幸い真空技術は半導体分野だけのものではない。電子、電気、エネルギー、化学、食品…。活用領域が無限ともいえる未来の技術である。

 同社の現在の取引先は約120社。かつて9割を占めていた半導体関連は1割ほど。大口顧客はない。組織、業績の規模は多少スリムになったが、経営バランスは格段に向上した。

 加えて、昨年から中古ポンプ販売を始めた。設備入れ替え時などに顧客から引き取ったポンプの在庫が100基以上あり、コスト面で中古を求める声に応えていけると判断したためだ。

 「国内外を問わず、全メーカーの真空ポンプのメンテができる」と山口社長が自負する同社の強みは当然、中古販売にも生きる。新品時と同等の性能を出せるよう、在庫は全てオーバーホール済みだ。

 「若い技術者を育てることが自分の使命だと思っている」と山口社長。

 頑固な社長が常時傍らにいては、社員の気も休まらないが、のんびりもできない。社用車の運転もすれば、多忙時は作業もサポートするし、営業にも出る。作業服を脱ぐ暇はない。(矢吹 彰/2014年11月1日号掲載)

…続きはご購読の上、紙面でどうぞ。