原田製作所、取引先の拡大で 関係業界を広げリスク対応/ワイヤーハーネス製作・加工


「ホームページの効果に驚いている」と原田社長

「ホームページの効果に驚いている」と原田社長


 戸建て住宅と見紛う建物のベランダ下をくぐるように踏み入ると、土間には大型の加工機が1台。その奥、通常の住まいなら居間にあたるスペースは作業台と各種機械機器でびっしり埋る。

 ワイヤーハーネス製作・加工を手掛ける原田製作所(相模原市中央区下九沢55の12、原田真弥社長)の本社工場は築40年。昭和の香り漂う町工場の風情を存分に残している。

 同社は1971年、原田社長の父・光弥氏が田村電機製作所(現サクサホールディングス)をスピンアウトする形で創業。田村電機の基幹であった公衆電話機に内蔵されるハーネス部品を加工する下請けとしてスタートした。

 船出は順調で、以後20年近くにわたり取引先は田村電機一本で通したが、景気や時代の変化により受けた波は小さくはない。

 そんな同社が公衆電話機の衰退に引きずられなかったのは、80年代末以降、下請け業者仲間や材料の仕入れ先から紹介された田村電機関連以外の仕事が徐々に広がり、結果的に一社依存のリスク対策になったからだ。

 主要取引先は現在4社。総数で15社ほど。

 同社の事業は今も一貫してワイヤーハーネスの製造に特化しているが、取引先の拡大がもたらす関係業界の広がりが危機を救ってもいる。

 「リーマンショックの際は、医療機器用パーツとしての引き合いがあったことが、致命的な打撃を防いでくれた」と原田社長は振り返る。

 医療機器、音響機器、鉄道車両用機器等、様々な業界との関わりもまた、重要なリスク対策となっている。

 ただ実のところ、同社への発注形態は得意先から図面が提供されるだけで、それがどのような製品に組み込まれるのか分からないことが少なくない。つまり、関われる業界は取引先任せであり、不況時に強いからといって医療機器に用途を絞って受注するのは困難。

 既に、国外工場の隆盛に伴い単価が下落している量産を捨て、試作品をはじめ多品種小ロットに事業の方向性をシフトするなどの対策は講じているものの、受け身の営業を基本路線としてきた同社にとって、今後に向けた課題は多い。

 そんな中、意外な特効薬になっているのが近年制作したホームページだ。

 「このところ、新規取り引きの大半はホームページがきっかけ。関東が主だが、関西や九州からの問い合わせ、引き合いもある」と原田社長もその効用に驚く。当面、ホームページを通して積極的に新規顧客を獲得し、リピーターを増やしていくことで事業を安定させていければと考えているようだ。

 一方、社長にはもう一つ、将来構想がある。

 「まだ受注段階にないが、加工したハーネスを筐体に組み込む作業まで行なえないかという依頼が何件かある」
 実現できれば、確実に事業の安定、発展につながりそうだ。 (矢吹 彰/2015年1月20日号掲載)

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