エクストコム、独立・起業でMEMSエンコーダを開発/角度・位置センサーの設計・製作・販売


技術者魂衰えぬ千野社長

技術者魂衰えぬ千野社長


 受験シーズンはたけなわ。入試で好成績を収めるには、まず回答率を高めること。難問は後回しにし、比較的取り組みやすい問題から処理するのが鉄則である。

 短期間で結果(収益)を出さなければ激しい競争社会で生き残れないという点では、企業活動も同じだ。

 そんな中、ロータリーエンコーダなど角度・位置センサーの設計・製作・販売を手掛けるエクストコム(大和市大和東1の6の12)を10年ほど前に創業した千野忠男社長の動機は、他社が後回しにする難問に取り組むためだった。

 創業前の千野社長は、ロータリーエンコーダの専門メーカーに25年間在籍。エンジニアとして、標準仕様だけでなく数多く特注品の開発に関わるうちに、MEMSエンコーダ開発への意欲を膨らませていった。

 MEMSエンコーダは、半導体集積回路作製技術により半導体レーザー、フォトダイオード等の光学素子を一つの基盤にハイブリッド集積した、超小型、高精度、高分解能を同時に実現する究極のエンコーダ。開発できれば、サーボモーターやロボット、半導体製造装置、各種試験装置や計測・測定機器など、多様な用途で威力を発揮することが期待される。

 それだけに開発の難易度は極めて高く、夢はあるが、無期限かつ費用対効果が未知数の開発事業に積極的に取り組む企業はごくわずかだ。

 サラリーマンとして組織や仕事に取り立てて不満はなかったが、「このままではMEMSエンコーダの開発に関わることなく定年を迎える」という焦燥感が、千野社長に独立・起業への決断を促した。2005年、55歳の時のことである。

 もちろん創業当初から、事業をMEMSエンコーダの開発のみに特化するわけにはいかない。OEMや特注のロータリーエンコーダ設計・製作を基幹に据え、並行して大学のラボや公的研究機関などと連携しながら独創的な製品開発に並々ならぬ熱意を注いできた。

 それらは一歩一歩、着実に実りつつある。

 10年には、MEMSエンコーダの開発が、経済産業省の「特定研究開発等計画」に認定。11年には、試作品が神奈川県の「神奈川工業技術開発大賞奨励賞」を受賞した。

 一方、汚染や振動、温度変化など悪環境に強いセンサーとして08年から設計・製作実績のある変調波レゾルバの技術が、11年に「JAXA(宇宙航空研究開発機構)オープンラボ公募」共同研究開発課題に選定され、13年に試験納入された。月面探索など宇宙開発分野で広く利用すべく、実用化試験が続けられている。

 同社では、今年12月開催の「国際ロボット展」発表を目指して、MEMSエンコーダの最新サンプルを研究開発中。

 「難しい技術に挑戦し続けるためにも、営業力をより強化し地力を高めたい」

 経営者となっても、技術者としての熱意は全く冷めない。(矢吹 彰/2015年2月10日号掲載)

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