近年、緩衝材や搬送容器など樹脂製輸送用資材の進歩が著しい。重さ数10キログラムに及ぶ金属パーツを1キロにも満たない緩衝材が支える様には、ある意味、感動すら覚える。
昨秋、創業25周年を迎えたサンプロト(大和市上草柳460、須田好男社長)は、樹脂製輸送用資材の設計・試作から加工、販売までを自社内でこなす。
樹脂製資材の進歩は大手化学メーカーが開発する新素材による部分が大きいが、物流現場の多様なニーズに沿って特注加工を施す同社のような存在があってこそ結実する。
現在同社が主に手掛ける素材は、ポリプロピレンを原料とする中空構造の「プラダン(プラスチック段ボール)」、ポリプロピレン系押出発砲シート「スミセラー」、低密度ポリエチレンを原料とする押出高発泡緩衝材「サンテックフォーム」。
これらをカットしたり、加熱して折り曲げたり、ネジやリベットで貼り合わせたり、バインディングを取り付けるなどして、用途に応じた容器、台座、緩衝材を製作する。輸送される製品や部品あってこその資材だから、単体では意味をなさない存在だが、綿密に設計、加工される過程を追えば、それ自体がもう一つのものづくりである。
樹脂製資材は軽量で加工が容易な上、強度、耐久性、耐水性において紙製に優るため、繰り返し利用が可能。特定の事業所間等における通い箱のように使えば、物流コストの低減につながるが、単価は紙製より割高なので、通信販売など一方通行の物流には向かない。
一方、同社の立場からすれば、耐久性に優れ使い回しのきく樹脂製資材は顧客の買い替えサイクルが長いことがネック。
「用途によっては5年は使える。再発注が年に一度ぐらいの取引先はざら」と須田社長は話す。
事業の安定、発展には、単価が稼げる多品種小ロットの受注を数多くこなすことが求められる。
1989年の創業当初から、販売先を通じての大口顧客は日産座間工場だったが、95年に閉鎖。受注激減を補うべく、その後は電子部品、医療機器、食品など業界をひろげ、顧客を増やしてきた。
また、2010年に旭洋紙パルプの傘下に入り、さらに翌11年、旭洋紙パルプが王子ホールディングスの連結子会社になったことで、経営は安定している。
反面、販売ルートがほぼ固まっていることから、高い設計・加工技術を持つ同社としては、まだまだ多面展開できる樹脂製資材の可能性を生かしきれていないというジレンマがある。
13年には災害対応品としてサンテックフォームを素材とした折りたたみ簡易ベッドを開発し、インターネットを通じ直販を始めた。
「最近は、ホームページを通じての問い合わせ、取り引きが増えている」と須田社長。
カラフルなプラダン容器など、一般消費者も視野に入れた規格製品のネット通販も検討中だ。(矢吹 彰/2015年3月1日号掲載)