高速内燃機工業、非常用発電設備に不可欠な存在/発電機 船舶用エンジンのメンテ・修理


エンジンメンテ半世紀の横田社長

エンジンメンテ半世紀の横田社長

 理由はないが、何か気になる社名だ。少なくとも、相模原市周辺で類似する企業名は見かけない。

 高速内燃機工業(相模原市中央区下九沢1087)創業者でもある横田豊社長によれば、「同業者もこの辺りにはない」という。

 高速内燃機とは、すなわちエンジンのことだが、同社が手掛けるのは一般的な4輪車・2輪車用ではなく、主として発電機や船舶用のディーゼルエンジン。そのメンテナンス、修理を行っている。

 創業は1989年。それまで四半世紀の間、横田社長は横浜・鶴見区で船舶や建機用エンジンのメンテナンスを行う企業に勤務。創業の地を相模原(当時は田名)に定めたのは、船出にあたり重要な取引先となる三菱重工の存在があったからだ。

 現在、現場で実務作業にあたる社員は15人。エンジン1基あたり2~5人がチームを組んで、月40基ほどのメンテナンス、修理をこなす。

 扱うエンジンのおよそ9割は非常用自家発電機用で、出力は30~3000キロワット。船舶用では、伊豆の熱海、伊東と初島を往復する観光船や作業船に搭載される100~3000馬力のもの。

 これらのエンジンの大半は三菱重工製で、メンテ、修理作業の単価は標準作業時間等に基づき重工側で厳密に規定されている。その上毎年の受注量もほぼ一定というから業績は安定していると見るのが妥当だが、内実はそう単純な話ではない。

 「社員がこなせる作業の許容量に対し年間を通じて常に100%の受注があるならいいが、時期により50~120%のばらつきがあるため効率が悪く、とても安定しているとはいえない」と横田社長は話す。

 ここ何年も繁忙期は決まって11~3月。時には手が足りないほどの発注もあるが、協力会社とできる同業者が近隣にないから、一定量以上の受注はできない。反面、それ以外の時期は人手が余る。

 重工傘下にあるわけでもなく、他社製エンジンを手掛けるにあたって“縛り”など存在しない。
 長年の経験、技術の蓄積があるから、同社にとって重工製エンジンが最も扱いやすいのは当然だが、横田社長としては、閑散期対策として他社製エンジンへの積極的対応も視野に入れてはいるようだ。

 一方、特殊な技術が求められ必然的にベテランが多くなる同社では、若手の育成も今後の重要課題だが、ただでさえ中小企業に人材が集まりにくい時代。ハードルは高い。

 「10年で一人前になったらこの仕事ではかなり優秀。通常15年くらいはかかる。繁忙期は日曜、祝日の出勤、夜勤もある。若い社員はぜひとも欲しいが、募集してもまず来ない」と横田社長も諦め顔。

 価格競合の波にさらされ苦しむ企業も少なくない中、競合はなくても大きな課題を抱える企業もある。事業内容は決して斜陽に類するものではないだけに、将来に向け状況の改善が期待される。
(編集委員・矢吹彰/2015年5月10日号掲載)

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