東邦通信システムズ、一流の中小企業目指し30周年/「四身一体」で地域貢献


橋本日吉社長

橋本日吉社長

 30周年を迎えたネットワーク機器販売会社「東邦通信システムズ」(大和市中央林間)。その創業者で社長の橋本日吉さんは「四位一体の利益の追求」と称する経営理念で、地域社会の発展に貢献する。2015~16年度の大和中ロータリークラブの会長に就任し、「みんなのために…ワクワク楽しく そして仲間を創ろう!」をスローガンに事業を展開していく。韓国など外国との民間交流活動にも力を入れ、地域だけでなく、国際親善にも挑戦している。 (芹澤 康成/2015年6月1日号掲載)

■27歳で抜擢

 橋本さんは1950年、福島県郡山市の農家に生まれた。5人兄弟の次男で、農業組合の役員を務めた父親の背中を見て育った。

 「少年時代は足が早かった」と話す。野球ではセンターを務め、陸上競技でも長短に関わらず活躍した。

 早く稼げるようになりたいと、進学した郡山商業高校だったが、ある先生との出会いで学業の“大切さ”を知る。「もっと勉強したい」と考えた橋本さんは、専修大学商学部に進学した。

 家計を案じ、新聞配達で学費をまかなう「特待奨学制度」を利用。午前3時に起きて朝刊を配達。午後4時から夕刊の配達があり、「友人と交遊する時間が持てなかった」と苦笑する。

 大学を卒業した橋本さんは、ホテルやレストランのコンサルタントを手がける会社に就職。経済成長の波に乗って外食産業が躍進的な成長を遂げる中、20代半ばで渋谷駅東口の展望レストランの立ち上げ責任者に抜擢される。

 財務の強さが評価され、27歳でグループ内の最年少の社長に就任。六本木や原宿など、都心の人気エリアで大型事業を成功させていく。一方で、利益至上主義経営で、客や従業員の一人ひとりと向き合った仕事ができない現状に疑問を持ち始めたという。

■四身一体で

 重苦しい気分に終止符を打つべく、82年に退職。個人事業主として、東邦通信工業を大和市鶴間で開業した。日本電信電話公社(現・NTT)の民営化に伴う通信事業自由化に着目し、通信機器の販売・保守を事業とした。しばらくは法人化のための資金集めに奔走した。

 85年にNTTが発足すると、200万円を投じ東邦通信システムズとして法人化。徐々に従業員を増やし、約5年で事業を軌道に乗せた。

 「開業後、最も苦難と感じたのは資金繰り」と話す橋本さん。「一生懸命働けば、誰かが必ず手を差し伸べてくれる」と、学生時代に培った新聞の新規購読者獲得のノウハウが生きた。

 一度販売したら「おわり」ではなく、その後も様子を見るため販売先を回った。保守点検も行ったが、訪問すると新しい仕事や取引先を紹介してもらうこともできた。

 橋本社長は「四位一体の利益の追求」を柱とする経営理念を掲げる。四位とは「社員」「顧客」「会社」「取引先」を示し、それらの追求が働きがいと活力の溢れる強靭な会社をつくり上げるという。

 反面教師は、会社のみの利益や売上至上主義を追求するあまりに離職率が高かったり、取引先に無理を強いている企業だ。「人は何のために働くのか。それを考えれば、自然と〝四位一体〟に行き着く」と強調する。

■韓国と親善

 橋本さんは、県央日韓親善協会の会長を務め、日本と韓国の友好にも力を入れている。きっかけは約30年前、大和青年会議所(JC)のメンバーとして、姉妹JCの韓国・南仁川との交流事業に関わったこと。青少年サッカーの交流試合を行った。

 「空港に着いたら、キムチのにおいが漂っていたことが印象に残っている。正直、えらいところに来たなと思った」と苦笑する。

 交流試合では、言葉が通じなくても、1個のサッカーボールを追いかける子供たちに感動を覚えた。「政治や経済で解決できないなら、民間レベルの交流からはじめれば良い」と、市民間交流に一つの希望を持った。

 02年、韓国との共同で開催されたサッカーワールドカップ。民間レベルで盛り上げようと、前年に県央日韓親善協会を結成し、初代事務局長に就任した。09年に大和市と韓国・光明市の姉妹都市締結にも尽力した。

■一流の中小

 橋本さんは、7月から大和中ロータリークラブの会長に就任する予定。そのスローガンは、東邦通信システムズの企業理念にも通じるものが見られる。企業と地域、社員など、あらゆる立場の発展に貢献しようとする姿勢だ。

 「社員は会社の財産。売上が悪いからといって費用を削減するのではなく、新しい事業を創出する。それが地域貢献だ」と話す。橋本さんが描く「地域できらりと光る小さな一流の中小企業へ」のビジョンは、形を表してきたのかもしれない。

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