鈴木泰生さん、相模原間税会をけん引/租税教室での行政ボランティア活動


会長の鈴木さん

 会長の鈴木さん

 創立40周年を迎えた相模原間税会(会員数350)。前身は1974年7月に発足した、相模原税務署管内物品税協力会。民間事業者による納税協力団体だ。93年に現在の名称になり、鈴木泰生さん(㈱ジュベール・スズキ代表取締湯役)はその年から今に至るまでの22年間にわたって会長を務めている。若い世代や市民を対象にして消費税の役割と日欧の税制を解説する租税教室、相模女子大の学生の作品を後悔展示する税のポスターコンクールなど会事業を意欲的に牽引する鈴木さんの足跡を追った。(編集委員・戸塚忠良/2015年7月20日号掲載)

■間税会で活動

 鈴木さんは1946年田名の生まれ。小学生のとき上溝に移転し、父親の時計店の仕事を手伝うようになり、早稲田大学在学中は学業と自分で開いた店の経営を両立させた。積極的に販売促進のイベントを行い、それなりの反響を得た。その経験から「事を起こせば反応はある」という強い思いを心に刻んだ。その後は主に宝石を扱うようになり現在に至っている。

 物品税協力会当時から間税会にかかわり78年には青年部長を任され、親睦・見学・研修などの事業を引っ張る若い力の先頭に立った。

 この時期、相模原も傘下に収める全国間税会連合会は税制改正、消費税施行時における物品税の廃止などを掲げて政府への提言と要望活動を活発に行っていた。

 全国の血気盛んな青年部長と交流する中で、鈴木さんはお上にひれ伏したり、すり寄ったりするという思いを強め、同時に、協力会員の声が国の税制を論議に届くことに新鮮な驚きを覚えた。

 時代は移り89年4月、物品税は廃止され消費税が導入された。そのため物品税協力会は間税協力会に名称を変更したが、物品税廃止・消費税導入の影響は会の根幹をゆすぶる打撃をもたらす。課税売上3千万円以下の事業者に対する免税措置が取られたため、これに該当する中小事業者が大量に脱会したのである。

 ■会長就任

 こうした状況下の93年鈴木さんは旧称から改称した相模原間税会の会長に就任した。会長就任後は間税会の役割を多くの事業者と市民に知ってもらうため、「税制提言する間税会」「会員の力で税制を動かす」といったスローガンを打ち出して会員増強に力を注いだ。

 しかし、物品税がすでに廃止された時点で、間税会の活動目標として何が可能か、会の存在意義をどうすればアピールできるか…。答えはなかなか見つつ漬からなかった。

 99年には神奈川県間税会連合会会長、全国間税会総連合会常務理事の要職に就いた。翌年には、全間連の税制視察団の一員としてドイツ・フランス・デンマーク・フィンランドを訪問した。

 その後も何回かヨーロッパ各国を訪れ、間接税の実情を見聞した。欧州各国の消費税事情について蓄積した知識は後に、相模原間税会の事業に生かされることになる。

 会長として会の活性化の道を模索していた鈴木さんは09年、相模原税務署長に着任したばかりの守富哲夫氏と出会って迷いを吹っ切る。

 着任したばかりの新署長は、鈴木さんが前年に参加した欧州視察の報告書を読んですぐさま反応した。「鈴木さん、ヨーロッパの複数税率制の話を柱にした租税教室を高校・大学・専門学校で開いてはどうか」。まさに光明だった。「私が探していた間税会のありかちは、これだ」。

■税務教育

 こうして相模原間税会は租税教育を行う間税会という立脚点を確立し、「国の財政と消費税の役割」「EU諸国の消費税率が高い理由」「ヨーロッパの軽減税に伴う面白い現象のクイズによる解説」の三点をテーマにした大人のための租税教室を実施する段取りを整えた。

 講師は鈴木さんをはじめとする会役員。参考資料として会が独自に作成した「世界の消費税クリアファイル」を配布する。英仏の消費税の現状とわが国の消費税の行方を主なテーマに09年に相模女子大短期部と麻布大学付属淵野辺高校で初めて実施した。昨年県立高校としては初めて上溝高校で開催し、今年も7月7日に実施した。

 「税務に関する究極の行政ボランティァは租税教育。今は社会に出る直前の若者への租税教育が不足している。しっかりと教育しないとダメ」という信念を土台にしたこの「大人の租税教室」は波紋を広げ、いくつもの納税協力団体への出前講座や市民対象の公開講座を実施するほどになった。時間を短縮したミニ教室も考案し、一層の普及を図る考えだ。

 鈴木さんは「毎年租税教室の開催に協力してくれる相模原税務署の皆さんに感謝している」と話し、。「相模原は間税会は団結力が強く、役員は手弁当のボランティア活動を熱心にやってくれる。これからも全国のモデルになる啓蒙活動を続けていきたい」と展望する。

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