団体ツアーのように行動、時間の制約を受けない。ホテルや乗車券の手配が必要なく割安。ペットの同伴も可能。
昨今、外泊を伴う新たな旅の形態として、シニア層を中心に車中泊旅行の愛好者が増えている。
使う車両は豪華なキャンピングカーではなく、国産の軽自動車やライトバンをカスタマイズし、基本装備は2?4人分の就寝スペースと荷室、電源ぐらい。24時間利用可能な道の駅や高速道サービスエリアの駐車場を宿泊地とするため、トイレやキッチンは不要。
そんな車中泊向けのカスタマイズドカービルダーとして、愛好者はもちろん、業界からも大きな注目を集めているのが、Stage21(相模原市中央区上溝、霜田勝美社長)だ。
同社がこの分野に参入したのは5年ほど前だが、それまでも変化に富んだ長い道のりがある。
創業は1979年。それまで霜田社長は、中古の国産大型トラックを東南アジアへ輸出する企業の営業職にあったが倒産。起業の道を選んだのは、中古車市場の動向に明るかったからだ。
国道129号沿いで中古車販売店を開業。80年代に入り、全車29万円均一セールなどユニークな戦略で人気店となった。
ところがバブル景気で高級車の時代が到来。廉価車は見向きもされなくなる。次なる策は、若者に人気のワゴン車を個性的に演出するエアロパーツの開発。前職での人脈を生かし、生産拠点をフィリピンに移すことで製造コスト、売価を大幅に引き下げ、パーツ装着車両、パーツ単体とも大ヒットに結びつけた。
「大型トレーラー満載で入荷するエアロパーツがほとんど売約済みという状況がしばらく続いた」と霜田社長は振り返る。
90年代半ば以降、自社製品だけでなく、マツダのエアロ開発プロジェクトに参加するなど、主力事業を中古車販売からエアロパーツにシフト。この決断が新世紀の扉を大きく開く。
2003年にはエアロパーツの主力工場をインドネシアに移すとともに、当地の良質なチーク材を使ったアジアン家具・雑貨の製造販売にも乗り出した。
こうして培ったFRPやチーク材等の加工ノウハウに、積極採用した国産自動車メーカーOB技術者の手技、時流に即応する霜田社長の希有なセンスが相まって誕生したのが、オリジナリティあふれる車中泊向けカスタマイズドカーである。
さらに今年発売した軽自動車登録のミニトレーラーは、牽引免許不要、軽自動車で牽引可能な上、家電がそのまま使える太陽光自家発電を標準装備。相模原市トライアル発注認定製品に選ばれただけでなく、災害支援から商用、レジャーまで使える多目的性と省エネ性で、様々な業界、各種メディアで好評を得ている。
「太陽光や風力を活用しての製品プランはたくさんある」と霜田社長。
創業から36年の歳月を経たが、21世紀の舞台はまだ序盤だ。
(編集委員・矢吹彰/2015年10月10日号掲載)