古の食材を相模原の新名物に/どんぐりや桑の実でそばや麺


太古の日本人が食べていた自然の食材で、健康的な食品づくりを―。訪問看護・介護やデイサービスなどを経営する大堀浩さんは、相模原市内などに自生する桑の実やドングリなどを使った食品を開発し、道の駅清川(清川村煤ヶ谷)や京王線高尾山口駅のマルシェなどで販売している。相模川沿いの縄文遺跡でも木の実を食料としていた痕跡が発見されており、相模原・県央エリアの新たな名物になると期待される。

どんぐり桑の実 大堀さんは、産業保健指導担当者として都内の企業に務め、からだに良い食事を指導していたことがある。関東近縁の山々を散策することが趣味で、森林で栄養が豊富な健康食材を見つけては利用方法の研究を続けていた。

□桑の実でフルーティーな麺

桑は、養蚕で蚕の餌となる葉が血糖値を下げて糖尿病の予防効果があるとされ、すでに相模原商工会議所女性会が桑の葉茶「とうとるん」を開発・販売している。一方、大堀さんが目を付けたのは実で、体内の活性酸素を減らす作用があるとされる赤色アントシアニンを多く含む。美肌効果や免疫力の向上も期待されるカリウムもあり、高血圧の原因となるナトリウムの代謝を促すという。

「桑の実縄文めん」(税別285円)は、自生している桑の実を5~6月頃に採取し、茹でてから乾燥、粉末にしたものを小麦の生地に練りこんで製麺したもの。熟成して赤黒くなったものを選んで使っているため、淡い紫色でフルーティーな香りがする。年越しそばとしても好評。

■ドングリはクッキーなどに

ドングリは、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸など必須脂肪酸のほか、ビタミン、体内に蓄積された有害物質の浄化・排出を促すアニック酸、ポリフェノールが豊富を豊富に含む。弥生時代に稲作が始まるまで主食とされており、近年では低カロリーでありながら健康に良い成分を含む「スーパーフード」として着目されている。

「どんぐりクッキー」(同)は、「どこにドングリが入っているか分からない」との声を受け、ポリフェノールを含む渋皮も一緒に挽いた粗めのドングリを加える。粒が食感のアクセントとなり、渋皮のほろ苦さと共に「野趣的な味わい」となっている。

知人の手伝いでドングリのクッキーを売っていたことがあり、「なかなか売っていないから、これからも売り続けてほしい」と言われるなどニーズが多かったことが事業化の決め手。

「どんぐり縄文めん」(同)は、ドングリ粉と小麦粉を合わせて麺にも加工したもの。見た目は普通のそばのように薄茶色。木の実の素朴な味とほのかな苦みに、もちもちとした食感が特徴。小麦粉の代わりにそば粉をベースに製麺した「どんぐり縄文そば」(同)もある。

ドングリと桑の実は、いずれも大堀さんが山林に入って採取し、採ってきたその日のうちに自身で殻剥きや洗浄、乾燥などの下処理を行っている。ドングリは秋、桑の実は春と採取できる時期が決まっているため、年間を通して供給できるように下処理したものを冷凍保存しておく。

課題は食材の安定供給。自然由来のため、気象条件などで量や品質にバラつきが出るのは当然だが、野生動物や昆虫、人間などと木の実を狙うライバルが多い。

大堀さんは「地域のおいしく健康的なものを商品化して、地域の活性化につなげたい」と意気込む。今後についても、「市内にドングリや桑の実を使った料理を提供するカフェを出店する」と語る。

【相模経済新聞2月1日号掲載】

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