エコイート町田店、食品ロス削減に取り組む/賞味期限切れの食品扱うスーパー


品質や安全性にこだわりがある日本では、期限切れの商品を売ってしまえば店の信用を失う可能性が大いにある。あえて賞味期限切れの食品を扱い、まだ食べられる食品が捨てられている現状を変えようと取り組むスーパーが食品ロス削減ショップ「エコイート」の町田店(町田市忠生3)だ。事業者にとっては廃棄にかかる費用を削減でき、一般消費者にとっても買うだけで社会に貢献し、割安なので家計の助けにもなる店。コロナ禍の営業規模の縮小で食品ロスが増えているなか、生産者や消費者の意識改革につながるか取り組みが期待されている。

■期限切れや規格外

パッケージの賞味期限に「21・10・15(2021年10月15日)」と書かれた1㍑入りの紙パックの緑茶が並ぶ。取材に訪れたのは11月5日だから、20日程度前に期限が切れた商品ということになる。新型コロナウイルス感染症の影響で飛行機の利用者が減少し、余ってしまった機内サービス用の飲み物だという。

町田街道沿いの店舗

町田街道沿いの店舗



町田街道(都道八王子町田線)沿いの店舗には、賞味期限の迫った、または超えた飲料や缶詰、インスタント食品など7000点が並ぶ。賞味期限に迫ったものやパッケージデザインの変更などの理由で販売できなくなったものを、扱いに困ったメーカーや仲卸など協力企業700社ほどから買い取りや寄贈を受けている。

小売店は製造日から賞味期限まで3分の1が過ぎればメーカーなどに返品する。生産時の衛生管理やパッケージ技術は向上し続けているが、期限の設定基準だけ変わらないまま。早いもので賞味期限の3カ月前に持ち込まれるものもあり、「おいしく、安全に食べられるものが廃棄されている」と指摘している。

農林水産省によると、食品には「消費」と「賞味」の2つの期限がある。刺し身や弁当、ケーキなどは製造から約5日以内の消費期限を過ぎると食べられない。一方、賞味期限は飲料や加工品、菓子などのパッケージに表示された期限を過ぎると味が変わる可能性はあるものの、適切に保管されていれば安全に飲食できるものもある。

低価格の理由を説明する松田店長

低価格の理由を説明する松田店長



商品を店頭に置く際は、町田店を運営する会社「はまや」(相模原市南区大野台2)松田浩和社長(同店店長)や従業員が味を確認した上で販売している。「低価格で販売している理由が賞味期限切れであること、賞味期限切れの商品を販売することがフードロスへの取り組みの一環であることを理解してもらっている」と話し、来店する客とのコミュニケーションを欠かさない。

■食品ロスを啓発

エコイートはフランチャイズに近い仕組み。NPO「日本もったいない食品センター」(大阪市)の理念に共感した店舗運営者が、食品ロスに関する知識などについて研修を受け、試験に合格できれば出店できる。大阪や兵庫などを中心に13店舗があり、このうち関東圏内には町田店を含む3店舗がある。今後、相模原市内への出店する計画もある。

アサイーを使った乳酸菌飲料は12本入りで95%引きの100円、大手メーカーの炭酸飲料は500㍉ペットボトル入りで50円などと従来の食品店より大幅に安値で販売している。松田店長は「ディスカウントではない。儲けより食品ロスへの啓発や生活弱者支援などの社会貢献が目的」とし、従業員の人件費や交通費、店舗の家賃・光熱費を除いた売上げも同NPOなどを通して寄付などを行っているという。

店舗出入り口に「人数分ご自由にお持ちください」と書かれた保冷庫が置かれ、店内で販売されている飲料を無料で配布している。味をみてもらって気に入ったら再来店時に購入してもらうことももちろんだが、大量に買い取った食品をロスしないための工夫だ。母子家庭やコロナ禍で職を失った若者などに、食品を無償で届ける支援事業にも取り組む。

■社会情勢や災害に原因も

店内には「非常食」「災害時用飲料水」などとパッケージに書かれた食品も多く置かれている。2011年3月の東日本大震災以来、官庁や民間企業、学校などでも非常食や飲料水を備蓄するケースが増えている。非常食は平均で3~5年の賞味期限があるが、期限に近付くと管理者が新しいものに交換する。各々が防災訓練などで使用する場合もあるが、数百人、数千人分を消化できずに貰い手を探す官庁や企業なども多いという。

この日は、ほかにもカラオケ店や映画館で販売しているポップコーン、お祭りやイベントの出店で使う冷凍フランクフルトなども並んでいた。いずれも営業自粛やイベント中止などの影響を受けて販売が滞り、扱いに困った事業者から仕入れたものだ。店内を歩くだけで、日頃いかに多くの食べ物を消費し、余れば廃棄してきたか改めて考えさせられる。

 

【2021年11月10日号掲載】

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