JAXA、木星氷衛星の周回探査へ/日米欧共同ミッションに参加


太陽系最大の惑星である木星と、その氷に覆われた大きな衛星を探査する計画の探査機が14日午後9時過ぎ(日本時間)に打ち上げられた。世界初の氷衛星の周回ミッションとなる。日米欧の各宇宙機関などが協力して進める計画で、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは太陽系の惑星の起源や形成の過程を調べるとともに、地球外生命が存在する可能性を探る。【2023年4月25日号掲載】

木星圏に到達したJUICE探査機のイメージ=JAXA提供

木星圏に到達したJUICE探査機のイメージ=JAXA提供



木星氷衛星探査計画(JUICE)は欧州宇宙機関(ESA)が2012年5月に選定した大型探査機計画の第1号で、木星の磁気圏と大気、エウロパとカリストのフライバイ観測、ガニメデの周回観測が目的。31年に木星圏に到着し、34年にガニメデ周回軌道に投入、その後約9カ月後の35年9月をめどに任務を完了する。

探査機に搭載される全10観測機器のうち、日本は6つの危機の開発などに関わっている。JAXAはドイツとスウェーデンの計3機器にハードウェアを提供、イタリアとイギリスの計2機器の科学検証に参加する。

探査機は本体質量2・4㌧で推進剤を含めると5㌧を超える。幅2・5㍍、長さ3・5㍍のパネル10枚から成り、展開すると総面積が85㍍に達する巨大な太陽光電池(総電力820㍗)を備える。

木星の代表的な4つの衛星のうち、ガニメデ、エウロパ、カリストが主要な観測対象。それぞれの衛星には水の海があると考えられており、周回軌道を複数回周りながら観測を繰り返し、液体の水のほか、生命の源となる有機物やエネルギーの存在を調べる。

日本が中心となって進めるサイエンス分野は▽太陽系惑星の起源▽地球外の水の海の存在▽太陽系の環境変動―の3本柱。プロジェクトサイエンティストの関根康人教授(東京工業大地球生命研究所所長)は、JUICEについて「日本が小惑星を超えて巨大ガス惑星の探査、生命の可能性に本格的に足を踏み入れる記念すべきミッション」と強調する。

はやぶさ2の成果からは、生命のもととなる水や有機物が太陽系に広く供給されたことが分かり、「太陽系の起源論」を実証的に明らかにした。関根教授は「何が供給を引き起こしたのか、その根本原因が分かっていない」と説明する。

探査機が目指す木星は、地球の11倍の大きさ、320倍の質量があるという巨大な天体。「どこで、どのように形成され、現在の位置まで移動したかを探ることは太陽系の成り立ちを解明する鍵となる」(関根教授)。

探査機を載せたアリアン5ロケットは、南米フランス領ギアナの宇宙センターから打ち上げられた。

…続きはご購読の上、紙面でどうぞ。