病院給食などを手掛ける工場を相模原市内に置く第一食品(大阪府東大阪市)とパナソニックコネクト(東京都中央区)は21日、病院食の完全院外調理の市場拡大を見据え、トレーに皿を乗せる国内初というトレーメイク自動化システムを共同で開発したと発表。3月に同システムを導入した相模原工場(中央区田名)を報道関係者などに公開した。首都圏で複数施設を持つ医療法人と提携を進めることで、20年で売り上げ50倍を目指す。【2023年6月22日号掲載】
ほぼゼロベースから開発したという同システムは、病院から送信される患者ごとの情報をソフトに入力し、アレルギー食品など避けるべき食材を反映した献立を自動で提案するソフトを導入。ロボットが1枚ずつトレーをベルトコンベアに乗せる。ラインを流れて来るトレーに、機械が自動で押し出す料理をスタッフが置くだけ。
導入後の手ごたえについて「入社して2日目の高齢スタッフでも対応できた。熟練度に関わらず人員を配置できるため、シフト組みが容易になった」とする。
病院食は患者それぞれの病態や体質に合わせて多種の食事を組み合わせるため、「約1億通りの組み合わせが存在し、(トレーメイクは)もっとも難易度が高い工程」(第一食品)とする。完全院外調理では数千人分の食事を短時間で生産しなければならず、2~3年かけて熟練したスタッフの育成が必要となる。
病院食は365日3食の提供が求められるが、各病院での対応は人材確保が困難になっており、外注の需要は年々高まっている。第一食品は「専門性と習熟度の高さが外注を拡大するうえでネックになっている」と説明する。
新システムは、1食あたり4秒、3時間で1700食以上を生産できる能力。従来は14人が手作業で行っていたが、同システムを導入したことで現在は10人で作業を行っている。将来的には7~8人まで省力化したい考え。
同社は海老名市と秦野市にある2病院へ約2千食の提供を行っており、今後も順次拡大していく方針。小宮仁(じん)社長は「人手不足が課題となっている地方から展開し、首都圏を中心に需要を掘り起こす。2043年12月には市場の3分の1、3000億円にしたい」と意気込む。