自転車は観光の刺激策なるか?/初中級者呼び込みやシェアも


シェアサイクルの実証実験やサイクルツーリズムの推進など、日常生活の移動手段や観光の振興に自転車を活用する動きが相模原市でも広がりをみせている。市内で食事や休憩をとらないサイクリストが多く、消費活動がおうせいな中上級者を呼び込むことで市内消費の増大に期待する。【2023年11月1日号掲載】

◇初中級者取込狙う

市は首都圏(東京都、神奈川・埼玉・千葉の3県)のサイクリスト(1千人)全体を対象にウェブアンケート、相模原エリアの特徴・特性を分析するために市内を走行するサイクリストを対象とした地域アンケート(296人、橋本駅・オギノパン、鳥居原ふれあいの館)を実施した。

首都圏のサイクリスト全体では1回あたり30~50㌔を走行する初中級者が多いが、市内を走る人は50㌔以上を走行する中上級者の割合が高いことが分かった。首都圏を走る初中級者層を取り込むことができると期待する。

ウェブ調査の回答者は1回あたりの走行での消費額(食事や水分補給、宿泊など)は1万1465円。走行距離に比例して消費額が高くなるが、100㌔を超えると大幅に増額する傾向があることが分かった。市内のサイクリストは走行距離に影響を受けておらず、上級者を多く呼び込むことで消費額が増加する可能性を指摘する。

これは「市内を走行しているが、市内で食事をしないサイクリスト」が一定数存在することが一因とみる。約4割が市内で食事を摂らない30~100㌔の走行距離の層で、消費額を増やす伸びしろがあると見込む。

首都圏の初中級者は、健康や気持ちのリフレッシュを目的とする人が多く、市内を走行する中上級者と類似した傾向がみられる。中上級者が感じる相模原エリアの特徴を初中級者向けに訴求できる情報とその伝え方へ変える。

また、初中級者はインターネットの検索エンジンを通じて走行ルートの情報を調べているが、上級者は情報交換ができるコミュニティーを形成していることもあり、それぞれに適した情報の発信方法やルートの選び方を試行・検証しながらコースや立ち寄りスポットを開発、発信していく。

初中級者と中上級者のいずれも、サイクリング先では「地元の名物を提供する店」や「おいしいものを提供する店」に入りたいとしながら、盗難防止の徹底やサイクルラックの設置など「安心・安全」に関連する設備を求める傾向が強かった。

◇受け入れ環境整備へ

市内の一部が2020東京五輪(21年開催)自転車ロードレース競技の会場となったことから、レガシー(遺産)を生かしたサイクルツーリズムの推進を図る補助金を交付する。市内で活動する事業者に対し、サイクルサポートステーションの整備や、サイクリストの立ち寄り機会の創出を図る物品の購入費用などが対象となる。24年2月29日まで申請を受け付けるが、予算額に達し次第終了する。

サイクルサポートステーション整備は補助率全額で6万円が上限、立ち寄りスポット創出は4分の3で15万円まで補助する。

対象となる経費と購入資機材は、▽サイクルツーリズム環境の購入に資する経費(サイクルラック、空気入れ、工具など)▽サイクリストの疲労回復・休憩などをサポート(給水機や休憩用ベンチ、防犯機材の購入や工事など)▽サイクリストの誘致(駐輪スペースの設置資機材購入・工事、ノベルティー製作費)―などを例に挙げる。

◇シェアは昨年比倍増

市が2022年6月に開始したシェアサイクル(自転車の共用)実証実験(24年5月まで)では、ことし5月まで1年経過後の中間報告をまとめた。利用者数は当初の1205人に比べて2倍以上の2452人となり、施設数の増加や認知度の高まりから「採算性は良好であり、事業化は可能」(事業者)とする。期間終了後は本格導入について検討を行う。

自転車の貸し出しや返却を行うステーションは、JR横浜線と小田急線の駅前や、周辺の公共施設などを中心に設置38カ所(当初23カ所)されており、各駅から目的地への移動や近隣の大学などへ通学するための利用が多くみられる。

利用は、午前7~9時(9・3%)の朝と午後5~7時(14・3%)の夕方に集中し、通勤・通学の利用が多い。午前0~2時(8・8%)の深夜帯にも利用がみられ、市は「終電を逃した人が利用している」と考えている。

曜日による利用状況に大きな差はないとするが、土・日曜日の利用が平日より若干多く、買い物などの外出に使われていることも分かった。

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