相模原市、人権条例の骨子公表/罰則や属性で市会が批判


相模原市は17日、市議全員が出席する全員協議会で、本年度中の制定を目指す「市人権尊重のまちづくり条例案」の骨子を公表した。差別的言動(ヘイトスピーチ=憎悪表現)に対する罰則規定が含まれていない点などを批判する意見や、一方で条例によりイデオロギーや市民の対立につながることを懸念する意見、条例の必要性や正当性を根拠付ける「立法事実」について指摘する意見など、各会派から厳しい意見が続出した。【2023年11月22日号】

全員協議会
同条例を巡って、市人権施策審議会が3月にまとめた答申は、津久井やまゆり園事件を「障害者に対する不当な差別的思考に基づくヘイトクライム」と明記。「人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身を理由としたヘイトスピーチを規制し、著しく悪質なものは罰則で対処する」という内容だった。

条例案の前文では、津久井やまゆり園事件を「大変痛ましい事件。事件が決して風化することがないよう取組が求められる」と明記するにとどめた。市は「把握している事実のみを記載した」と説明した。

条例案の定義で「不当な差別」の対象は、「人種、民族、国籍、信条、年齢、性別、性的指向、ジェンダーアイデンティ、障害、疾病、出身その他の属性」として、答申より広い範囲の属性とした。

ただし禁止規定を設けたのは、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に限定した。市長は勧告や禁止命令、従わなければ氏名を公表できる。また市が調査し人権委員会の答申により、公共施設の利用を制限できる。刑事罰などの罰則規定は設けなかった。

市議からは「本邦外出身者へのヘイトスピーチに特化した条例であり、障害者やあらゆる属性を対象にすべき。答申案に忠実にしてほしい」などの意見があった。

市は「憲法の『表現の自由』に一定の規制をかける以上は慎重であるべき、実際に市内であった事実に基づき対象範囲(属性)について判断した」「刑事罰の導入までは当たらない」と説明した。

市内の不当な差別的言動について市が5月に行った調査によると、「(出身国・地域を理由とした)不当な差別に該当する可能性が高いものとして街宣活動が4件、インターネット上での事案が16件、その他疑義がある事案がある」とした。

条例の必要性や正当性を裏付ける「立法事実」についても、市は5月の調査結果を理由とした。

市議からは「本邦外出身者のみの人権を守るような条文とも捉えられてしまう。この条例を制定するかどうかで市民の対立を生んでしまっている。政治的中立性の確保は慎重であるべき」などの意見があった。

ヘイトスピーチ規制を巡っては、川崎市で2019年、全国初となる刑事罰を盛り込んだ条例案が成立。市の勧告などに従わず、民族差別的な言動を3回繰り返した場合、最大50万円の刑事罰を科すもので、20年7月に全面施行している。在日コリアンに対する差別的デモが市内で相次いだことがきっかけとなった。

相模原市の本村賢太郎市長は「議員の質問を重く受け止め、今一度、検討したい」と修正を検討する可能性を示唆した。市は来年3月の定例議会に条例案を提出し、同4月の施行を目指している。

 

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