ネット販売から実店舗開設へと展開し今年7月、緑区向原1―10― 45にオープンした「生涯スポーツ応援団」(富永一朗代表取締役)。社名そのままにグラウンドゴルフ、パークゴルフ、ゲートボール、ノルディックウォーキングをはじめとする生涯スポーツ用品の販売を手がけている。ネット市場での顧客は北海道から南の離島まで全国におよんでおり、販売実績は極めて好調。新たな拠点を設けてよりきめ細かいサービスと需要に即応するスピーディーな販売に努める構えだ。(編集委員・戸塚忠良/2014年11月1日号掲載)
富永社長(49歳、緑区若葉台)はホームセンター、商社、メーカーなど流通全般の会社に勤務した経験を持ち、生涯スポーツの市場に可能性の余地があると判断して2011年6月、ネット市場に参入した。いくつかの関連企業と接触した後、生涯スポーツ関連商品の製造販売を業務にしている、ニチヨー(栃木県)に注目。同社の正規取扱店としてショッピングサイトを構え各種用品の販売に着手した。
「いろいろなメーカーの商品を羅列(られつ)して売るというだけでは行き詰まると考え、主力の取引先を専門メーカーであるニチヨー1社に絞って業務展開することにした」という。
取扱商品はグラウンドゴルフのクラブからシューズまで、ゲートボールではシャフトとヘッドのセットからシューズまで、さらにボールやグローブ、マーカーなど、競技に必要な用品全てをカバー。
このほかにもパークゴルフ、マレットゴルフ、レクリエーションゲーム、さらに最近人気が高まっているノルディックウォーキング関連の商品も多彩に取り揃えている。
富永社長は店舗経営の基本的な姿勢を「生涯スポーツの愛好者の皆さんがお探しの用品をお値打ち価格で提供している」と説明する。この方針に沿ってロイヤリティーの低い仕入れにより最新の商品を低価格で提供するシステムを構築。注文にすぐに応じられるだけの在庫を確保できるようになった。
こうした発想と手法が多くのリピーターを獲得している。同社長が「在庫があるから、お客さんの希望どおりの商品を発送できる。そのため信頼度が高い。それがまた次の受注や紹介での取引につながり、在庫を増やせるという好循環を生んでいる」と話すとおり、初年度の売り上げは約5千万円だったが、その後は右肩上がりで増加している。2013年8月には法人化を果たした。
ショップの戦略上重視しているのは、スピードと大手では難しいきめ細かいサービスだ。「生涯スポーツの世界でも用具や用品に流行があり、その時期その時期で人気のあるものが変わる。この流れを素早くキャッチし、愛好者にお気に入りの商品をスピーディーに提供することは、大手ではできないと思う」と同社長。通話料無料の問い合わせ電話窓口の設置、日曜・祝日の商品発送といったサービスも行っている。
こうした経緯を背景に実店舗の開設を思い立った富永氏は来客用駐車場のある物件を探し、住宅が立ち並ぶ街並みの一角に、隣接する塾と工場が同時に貸し出されていた物件を確保。約83平方㍍の店舗を改装して新拠点とした。従業員は若手5人。
富永社長は「実店舗を開設することにはメリットもあればリスクもある。実店舗があるとお客さんの安心感が深まるし、店でお客さんの声にじかに接して商品への反応を確かめられるのは大きなメリット。店舗独自のオリジナル商品の強化の参考にもなる。その意味でここはアンテナショップ。商品を数多く取りそろえた店舗を構えることで、ネットでの売上高の増加にもつながると考えている」と狙いを説明する。
その一方、テナント料、人件費などのコストがかかるのが経営上のリスクになるが、同社長は「リスクをメリットに転化するだけの経営努力を重ねていく」と意欲的だ。
明るい店内には定番商品から2014年型最新モデルまでのクラブやクラブケース、色とりどりの各種ボール、シューズなど生涯スポーツ用品を豊富に常備しており、注文への即応が可能な在庫を擁することを物語る。個人からの注文だけでなく、法人や団体からのコート用品の注文にも速やかに対応できる態勢だ。
スタッフを増強したのに伴い、社員教育に力を入れ、一人ひとりがどんな相談にも丁寧に耳を傾け、希望に合った商品の紹介ができるように努める方針で、同時にメルマガや注文客へのお礼メール、ダイレクトメールといった新サービスを実施する準備を進めていく。
実店舗開設後もネット販売を主力にする方針に変更はない。ただ、近隣の愛好者やグループなどからの問い合わせや質問には、実物を紹介しながらアドバイスする。開店後、近くを通りかかったゲートボール愛好者が足を止め、店内の商品の品定めをする姿が見られるという。
「今の社会では健康寿命の大切さが強調されている。安心・安全な生涯スポ―ツ用品を提供することを通じて健康な社会づくりに貢献できれば」と、ビジネスの奥に秘めた思いを語る富永社長。実店舗開設を契機に、生涯スポーツ応援団のさらなる飛躍を目指す。