厚木市内2カ所で営業していた「自家製パン工房パンパパン」が2月14日、愛川町中津に移転・集約した。イートインスペースには円柱状の棚があり、葉物野菜やハーブなどの水耕栽培を行っている。自家栽培のレタスやベビーリーフを使ったメニューも特色だが、その背景には同店を経営する運営会社を取り巻く〝ある〟事情があった。【2025年4月1日号掲載】
運営する三紅テクニカ(東京都・日本橋蛎殻町)は、機械式や自走式の駐車場の設置や入れ替えなどを請け負う建設業で、人材の確保や雇用の安定化などに悩む。高齢化やけがなどで現場に立てなくなった作業員でも、パンの製造、水耕栽培における水(養液)の管理や収穫といった比較的軽い作業で雇用を継続できると見込む。
2019年頃から出店を計画していたが、同社は1987年設立で38年間パンと無縁。機材などの多額な設備投資が必要で参入に踏み切れていながったが、廃業を決めていた知人から譲り受けるなど開業のノウハウを得ながら開業を準備。小麦粉の調合なども、縁があった大手粉メーカーと協働で開発できた。
パンパパンは食パン2種類と菓子パン4種類を扱う食パン専門店として、2020年2月から製造・販売を行う下川入本店と、同年6月から販売のみの本厚木店を開店した。厚木市を選んだのは、輿水社長が厚木市出身で現在も市内に住んでいるため。
移転した理由には、アフターコロナで外食需要が回復したことに加え、「作り立てをすぐ食べてほしい」という作り手の思いもあった。下川入本店で製造したものを車両で約30分離れた本厚木店に輸送していたため、品質の維持が難しく、欠品が出ても補充に時間がかかり機会損失にもなっていた。24年秋にそれぞれを一時閉店し、店舗移転や新メニューの開発に乗り出した。
新店舗は、愛川町役場などの公共施設や店舗が並ぶ県道厚木愛川津久井線沿い。近くには内陸工業団地もある一方で住宅も多い。これまでの店舗では高齢者が多かったが、新たに子連れなどの若年層を取り込む。品ぞろえを約30種類に増やし、作り立て、食材の新鮮さを感じてもらおうとカフェ(イートイン)を新たに設けた。
水耕栽培は「新鮮な食材がどのように育っているのか、その過程も楽しんでもらえるように」と設置した。店内では64株を育てるが、バックヤードではさらに300株を栽培している。エディブルフラワー(過食花)や野菜などは来店客の目を楽しませるばかりでなく、イートインで提供するサラダや、持ち帰りも可能なサンドイッチなどに利用する。









